吉田健一展・生誕120年・文学の楽しみ(神奈川近代文学館)
22年4月2日から5月22日まで神奈川近代文学館で吉田健一展が開かれている。吉田健一は、終戦後の首相、吉田茂の長男として生まれた。吉田茂は吉田学校とも呼ばれた集まりを主宰し、自民党に強い影響力を持った政治家。その長男がなぜ文学者となったかがわかりやすく示されている。吉田茂は戦前外交官だったため、頻繁に海外へ赴任していった。健一は両親と共に外国へ行くことが多かった。ロンドンの小学校を出たのを始めとして、ケンブリッジ大学へ留学するなど、英語は健一にとって第2の母語となった。だが、健一が多忙な父親よりも愛情を感じたのは、祖父の貴族院議員・牧野伸顕だった。外国経験の多かった牧野も孫を可愛がったという。健一は英国でヨーロッパ文学に魅了されたものの、敬愛する教授から日本語での日本文学研究を薦められ、帰国する。戦後、健一は文学研究、批評、翻訳、随筆、小説と多方面で活躍した。会場には、父親の吉田茂国葬時の記録動画が展示されている。短い動画だが、喪主となった健一が緊張した面持ちで父親の遺骨の納まった箱を捧げ持つ場面が映っている。健一は、多くの文学者たちと交わり、酒と旅を愛し、家族や愛犬と暮らした。晩年、健康も優れなかったようだが、妻の信子と欧州へ旅立ち、パリで長女と会った後帰国するが、機内で体調を悪くして入院、急死した。外交官、政治家として波乱の人生を生きた父親とは対照的に、最後まで好きな世界を生きぬいた幸せな人生だったと思う。
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