鉄鎖の女性

22年1月下旬、中国東部の江蘇省徐州市豊県で撮影された動画がネットに拡散して話題になっていった。「動画には、農村にある粗末な小屋で、女性が閉じ込められている姿が映っていた。真冬の寒々しく汚い場所で、女性は薄着のまま首に鎖を巻かれていた」(アエラ、22/5/23)。女性の歯はほとんど抜け落ちており、相手とうまく話せない状態で保護され、入院したという。この女性の夫は50代で、子だくさんとして知られていた。この家を訪ねた男性が撮影した動画だった。中国では「(動画アプリ・トウイン)に投稿されて広がり、誘拐や人身売買、性的暴行の被害者ではないか、という疑いの声が一斉にわき上がった。『鉄鎖の女性』。女性はそう呼ばれるようになった」という。中国では1980年代に女性の誘拐と人身売買が深刻な社会問題になったが、その原因は当時の「一人っ子政策」だったという。農村では後継ぎの問題から娘の出産が嫌われ、息子が好まれた。そのため、男女のバランスが崩れ、嫁の取れなくなった農村の男性が村以外の女性を求めたのだ。「連れ去られた女性が貧困層の男性と結婚を強いられる事例などが伝えられてきた。事件の現場となった徐州とその周辺は、そんな誘拐の被害に遭った女性が少なくないと指摘されてきた地域でもあった」という。調査を求める世間の声に、地元当局は調査結果を公表した。女性には精神疾患があり、理由もなく子供や老人を殴ることもあったという。さらに調べが進み、女性が生んだ8人の子供はすべて夫の子供であることが明らかになった。2月10日には4回目の発表があり「女性は雲南省出身であることが判明し、女性を誘拐して売った容疑で、40代の女と60代の男も拘束された」という。さらに「女性は44歳で、人身売買の被害に繰り返し遭っていたことが判明した」。この女性の過去も判明していった。「10代で結婚し、2年ほどで離婚。1998年はじめに江蘇省に連れて行かれ、5千元(現在のレートで約9万7千円)で売られた。女性を妻にしたいと考えた男が買い手だったという。数ヶ月して行方不明になり、その後、河南省の食堂にいた女性を経営者夫婦が見つけ、1ヶ月後に近くの工事現場で仕事をしていた2人に売った。さらに別の人物を介して98年6月、女性は“夫”の父親に売り渡された。女性は90年7月に長男を出産し、2011年から20年にかけて7人の子どもを産んだ」という。女性は次第に精神疾患が悪化し、家族は荒れる女性を鉄の首輪で拘束していたらしい。“夫”は虐待の疑いで逮捕されたという。

この記事へのコメント