「脱落」から這い上がれない~安倍元首相銃撃事件(アエラ・22.8.1より)

アエラ(22・8/1号)は、安倍元首相銃撃事件の容疑者・山上徹也の高校卒業時の就職状況を分析している。格差研究が専門の早稲田大学人間科学学術院・橋本健二教授は「山上容疑者は、日本の資本主義社会における労働者階級のさらに下、『アンダークラス』という階層に入っていると見ていいと思います」と語る。「アンダークラス」は生きていくための最低限の賃金すら得られない非正規雇用労働者を指す。彼らは1990年頃から増えてきた。教授は「バブル期の雇用拡大で正規労働者とあわせて非正規労働者も増え始め、バブルが崩壊すると就職できない若者たちが非正規雇用に一斉に流入しました。98年、金融危機でその流れが一気に加速したんです」という。80年生まれの山上容疑者は99年に高校を卒業。公務員を目指して専門学校へ通うが中退し、02年に海上自衛隊へ入った。教授は「最悪の時代に社会に出た、と言えます。93年から07年頃までがいわゆる『就職氷河期世代』。中でも金融危機後の、99年から04年までに学校を出た世代の就職状況は最悪でした。大卒の就職率はバブル期には90%台、崩壊後も70%台を保っていましたが、98年を境に60%台前半まで急降下。高卒に至っては40%台前半まで落ち込みました。平均年収も他の世代と比べて極めて低く、厳しい世代です」その上、山上容疑者は進学校を出たことでさらに不利になったという。教授は「進学校なので就職実績がないんです。高校で就職した先輩がいる会社もなければ、就職指導のノウハウもない。もし、容疑者が高校を出てすぐ就職をしたかったとしたら、進学校卒であることがマイナスに働いた可能性もある」という。最悪の時代に社会に出て非正規雇用のまま「這い上がれない」青年の姿だ。教授は「近年起きている凄惨な事件の犯人には、山上容疑者に近い世代が多いんです。秋葉原通り魔事件を起こした元派遣社員の彼(82年生まれ)もしかり、京都アニメーション放火事件の彼(78年生まれ)もしかり。事件の背景に、この世代に特に顕著である『這い上がれない悲惨さ』があるのは間違いないと思います」という。

この記事へのコメント