前科者(22年公開DVD)

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近年、「素晴らしき世界」など、前科のある人物と保護司を扱った作品が続いてきた。香川まさひと原作、岸善幸脚本・監督の「前科者」は、刑期を終えて仮釈放中の元犯罪者たちと若い女性保護司の姿を描いたものだ。元会社員でコンビニ店員を続けながら無給の保護司をしている佳代(有村架純)は、高校時代に凶悪事件に巻き込まれそうになり、助けに入った友達の父親が身代わりになって刺殺された過去を持っている。その人はつきあっていた滝本(磯村勇斗)の父親だった。自分が生き残り、滝本の父親が死んでしまったことへの深いトラウマから逃れるために、佳代は前科者たちとつきあってきたのだ。佳代が担当する工藤(森田剛)は、職場の先輩を刺殺して服役し、仮釈放後に工場で働きながら半年間の保護観察期間を過ごしている。無口だが真面目な男に見えた。工藤の保護観察期間が残り僅かになった頃、都内で連続殺人事件が起きる。捜査に当たる刑事の中に滝本もいた。工藤は行き付けのラーメン店で弟(若葉竜也)と再会する。工藤と弟は、子どもの頃、目の前で母親を殺された過去を持っていた。犯人は暴力を振るう父(リリーフランキー)だった。施設に入った工藤と弟はさまざまな苛めを受け、就職先でも苛められた。工藤は母親を侮辱した先輩を衝動的に刺したのだった。工藤が逮捕された弟は施設でさらに苛められ、職員に鎮静剤を飲まされ続けた。精神的に不安定になったまま社会に出た弟は、復讐を思い立つ。母親の相談を無視した警官を襲って銃を奪う。その銃で、母親を保護しきれなかった福祉の課長を殺し、施設で鎮静剤を飲ませた職員を殺したのだ。一方、遺体の爪から工藤のDNA型が採取される。工藤は佳代との最後の面談を欠席し、失踪していた。警察は工藤を容疑者と断定し、行方を捜す。だが、工藤を信じている佳代は、独自に工藤を探し始める。2本の線は、工藤の母親を殺害した父親のアパートで交わりかける。だが、その部屋の周囲にはすでに警察が張り込んでいた…。とても重く、救いのない世界だ。佳代の周囲には、更正を果たした便利屋のみどり(石橋静河)などを配してユーモアも加味してあるが、工藤と弟、その母親の人生はあまりに悲惨だ。保護司をしている佳代の笑顔と、絶望しか知らない殺人犯・工藤の苦渋に満ちた表情の落差は大きい。

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